テイエムオペラオーは本当に大したことなかったのか?いや、さすがにそんなことはない③

東スポさんがnoteでしっかりとした記事を作ってくれてたので、まあ自分はもういいかなという気持ちもありますが、半端すぎますからね。
引き続きテイエムオペラオーのレースぶりを振り返って、大したことないわけがないだろうという検証(?)をしていきたいと思いますw


勝ち切れないレースが続いた4歳秋のテイエムオペラオー
世紀末2000年は「全部勝つ」という決意のもとのスタートとなりました。

伝説の始まり

テイエムオペラオー、そしてナリタトップロードの2000年の初戦は2月の京都記念(G2)となりました。
再び揃って出走することとなったこの2頭。人気も当然この2頭に集まります。

7枠8番テイエムオペラオー
7枠9番ナリタトップロード

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京都記念は0:00~0:30までです。

前年のクラシックホース2頭が同枠で始動となったこのレース。
同じような位置からレースを進めて並んでコーナーを回ってくるまさに2頭の戦いといった感じのレースでした。
一度はナリタトップロードがオペラオーを捉えたかと思わせましたが、そこからオペラオーがもうひと伸び。
クビ差でオペラオーの勝利となりましたが、着差以上の力の差を感じさせるレースでした。


さて、順調に始動したオペラオーとトップロードに対し、アドマイヤベガ繋靭帯炎を発症。
そのまま引退し種牡馬入りとなってしまいました。
世代屈指の末脚を持つこの馬の離脱もオペラオーの評価に影響を与える要因だと思いますが、
充実一途のこの年のオペラオーにどこまで対抗できたかは今となっては分かりません。

代わってナリタトップロードに続くライバル格に浮上してきたのが、菊花賞でも3着に入ったラスカルスズカです。

サイレンススズカの弟 ラスカルスズカ

ラスカルスズカは父コマンダーインチーフ、母ワキアという血統で、サイレンススズカの半弟にあたります。
菊花賞の後はジャパンカップに挑戦して5着と健闘。
鞍上を武豊に戻した2000年初戦の万葉S(OP)は単勝1.1倍の支持を受けての勝利。
オペラオー、トップロードにラスカルスズカを加えたこの3頭が天皇賞へ向けての前哨戦、阪神大賞典(G2)でぶつかることになりました。


この年の阪神大賞典ではこの3頭の人気が他を引き離して飛びぬけており、4番人気メジロロンザン単勝オッズは65.5倍にもなっていました。

1枠1番テイエムオペラオー
3枠3番ラスカルスズカ
5枠5番ナリタトップロード

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阪神大賞典は0:30~1:00までです。

同じような位置からレースを進めた3強ですが、直線に入って残り200メートル付近でテイエムオペラオーが先頭に立ったらあとは離すだけ。2馬身半差をつけての完勝でした。
あっという間に置いていかれたナリタトップロードは内から伸びてきたラスカルスズカもかわせない3着。

これまでは常に同格のライバルと見られていたオペラオーとトップロードですが、
この完勝で2頭の評価は大きく開いていくことになります。

第121回天皇賞

2000年4月30日京都芝3200m 曇 良

2枠2番ラスカルスズカ
5枠5番テイエムオペラオー
8枠11番ナリタトップロード

阪神大賞典から引き続き、人気は3頭。
しかし今回はテイエムオペラオー単勝1倍台の1番人気となり、一枚上という評価をされています。

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こっちの動画だと1:00~1:37まで。


結果もこの3頭が強かったレースでしたが、前を行くナリタトップロードをキッチリとらえ、
後ろから来るラスカルスズカを抑え込むという正攻法でテイエムオペラオーが勝利。
最後は余裕を残しており、ここでも力の差を見せつけていると言っていいでしょう。
皐月賞以来となるGI2勝めとなりました。

テイエムオペラオー宝塚記念を目指し、ナリタトップロードは秋に備えて休養。
ラスカルスズカ金鯱賞(G2)から宝塚記念を目指すことになります。

金鯱賞ラスカルスズカ単勝1.3倍の圧倒的支持を集めましたが、結果は3着。
ここを勝って宝塚記念に名乗りを上げたのがメイショウドトウでした。

オペラオーのライバルといえばこの馬 メイショウドトウ

アイルランド生まれの外国産馬で、父はノーザンダンサー系でラストタイクーン産駒のビッグストーン。
母父はアファームドで、偶然にもナリタトップロードと同じ血が入っている。
外国産馬としては超格安の500万で輸入。
ちなみに「メイショウ」でおなじみ松本オーナーは小牧場の安い馬を多く購入、所有しているタイプの馬主で、小さい牧場を支える馬主として知られている。

メイショウドトウはクラシックにも縁がなく、4歳の秋にようやく準オープンを抜けていました。
しかし2000年に入って頭角を現し、日経新春杯で2着、中京記念で重賞初勝利。
金鯱賞で重賞2勝目を飾り、宝塚記念へと進みました。

また、オペラオーに和田、トップロードに渡辺という若手騎手が主戦を任されていたのと同じく、
メイショウドトウも若手の安田康彦が主戦であり、若手騎手の切磋琢磨が見られた時代でもありました。

第41回宝塚記念

2000年6月25日阪神芝2200m 雨 良

さて、メイショウドトウもいますが、このレースの注目はなんといっても新旧王者対決です。
1番人気は天皇賞勝ちのテイエムオペラオー単勝オッズは1倍台。
続く2番人気はグラスワンダー。前年の覇者でグランプリ連覇をしている馬ですが、この年は2走していいところのない2連敗。
メイショウドトウはまだ離れた6番人気でした。

1枠1番テイエムオペラオー(1人気)
4枠4番メイショウドトウ(6人気)
7枠8番ラスカルスズカ(3人気)
8枠11番グラスワンダー(2人気)

メイショウドトウは逃げるサイレントハンターから離れた2番手。
第3コーナーからオペラオーとグラスワンダーが外をまくりにかかり、ラスカルスズカは内をついて先頭に出ました。

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グラスワンダーが伸びない一方でオペラオーは大外から前のラスカル、ドトウをとらえてクビ差ながら圧勝という内容でした。
メイショウドトウもただでは負けず、ジョービッグバンを差し返して2着。
一方のグラスワンダーは骨折しており、このレースを最後に引退。
テイエムオペラオーはこの春4連勝となり、まさに王者交代といったレースでした。

テイエムオペラオーの並んで抜かせない強さが注目されてきたレースだと思いますね。
あと、メイショウドトウも最後によく伸びるんですよ。テイエムオペラオーに抜かれた後にもう一度食い下がってくるので強いです。

偉業達成の秋へ

この年から天皇賞外国産馬にも開放され、外国産馬の出走枠2枠が設けられていました。
外国産馬であるメイショウドトウオールカマー(G2)から始動し、先行押し切りで文句なしの勝ちっぷり。
ちなみにこの時、安田康彦騎手は道交法違反酒気帯びで逮捕されて騎乗停止になっており、
続く天皇賞まで的場騎手に乗り替わっていました。

オペラオーとトップロードは秋初戦の京都大賞典(G2)でまたもマッチアップ。

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京都大賞典は1:36~

人気通りにオペラオーとトップロードが競り合う展開になりましたが、この展開だとオペラオーは抜かせない。
アタマ差の接戦ながらどうしても届かないナリタトップロード、僅かな差が高すぎる壁となりこれでこの年はオペラオーに4連敗。
テイエムオペラオーは重賞5連勝で天皇賞へ向かいます。

第122回天皇賞

2000年10月29日東京芝2000m 曇 重

秋の古馬中距離GI3連戦の第1戦となる秋の天皇賞
ここでもテイエムオペラオーは当然一番人気になるわけですが、そこにジンクスが立ちはだかります。
この年まで秋の天皇賞は1番人気が12連敗中であり、1番人気が勝てないというジンクスがありました。
オグリキャップメジロマックイーントウカイテイオービワハヤヒデナリタブライアンサイレンススズカなど、数多くの名馬が敗れ去った秋の天皇賞
それ以前にもシンボリルドルフなど多くの人気馬が敗れており、このころはまだ何が起こるかわからないという印象のあるレースでした。
しかもこの時、和田騎手は東京競馬場で未勝利という状態だったのです。そんなわけでオペラオーにも疑いの余地ありということで単勝2倍台のオッズになっていました。

2枠3番ナリタトップロード(3人気)
7枠13番テイエムオペラオー(1人気)
8枠15番メイショウドトウ(2人気)

逃げる2頭が後続を引き離す中、外枠から先行策をとったオペラオーとメイショウドトウ
ナリタトップロードは中団です。

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直線を向くと、テイエムオペラオーは前に出ているメイショウドトウを残り200メートルでとらえ、
あとは問題なく差が開いていくだけ。ジンクスなど関係ない、全く危なげのない勝利となりました。
2着はメイショウドトウ、懸命にオペラオーを追ったナリタトップロードですが、伸びきれず5着。
ナリタトップロードは良馬場でなければ力が発揮できないタイプの馬で、雨が降りやすい宝塚記念などは毎年回避していたんですね。

テイエムオペラオーはこれで史上初となるJRA主要4場GI制覇を達成しました。(東京・中山・京都・阪神
この記録を達成しているのは現在においてもジェンティルドンナキタサンブラックオルフェーヴルしかいない大記録です。
(※ディープインパクト宝塚記念京都競馬場開催)
それだけ、戦場を選ばずに勝つということは難しいんですね。どうしても得意条件というものがありますから。

こうして、テイエムオペラオーは6連勝でGI4勝目を飾り、歴史的名馬の域へと足を踏み入れたのです。

第20回ジャパンカップ

2000年11月26日芝2400m 晴 良

ついに強さを認められたテイエムオペラオーはこのジャパンカップ単勝1.5倍という圧倒的支持を集めました。
2番人気の海外馬ファンタスティックライトは8.9倍です。
安田康彦の騎乗停止が明けたメイショウドトウですが、すでにオペラオーに2連敗していますからここでは5番人気まで下げ、
代って3番人気、4番人気に支持されたのがその年のクラシックホース、エアシャカールアグネスフライトでした。

参考:2000年日本ダービー
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何と言われようが名勝負ですよね~。


一方のナリタトップロードはオペラオーに負け続けていたため1年間未勝利で、除外され出走することもできませんでした。
過去に強かっただけで最近振るわない馬を除外する「過去1年間」の規定ですが、菊花賞はギリギリ1年以上前。
この年の4歳GI馬が4頭も出走してきていたのが痛かったですね。晴れの良馬場という力の発揮できる舞台だっただけに。

4枠8番テイエムオペラオー(1人気)
5枠10番ファンタスティックライト(2人気)
7枠13番メイショウドトウ(5人気)

レースはステイゴールドがまさかの逃げをうつものの、メイショウドトウは先行しオペラオーがその後ろぐらいといういつもの態勢。
クラシックホースのエアシャカールアグネスフライトは共に後方から追い込むタイプなのでどちらも後方から。

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最終コーナーで一気に前に押し寄せる4歳勢に対し、オペラオーは動かず直線に入ってからの追い出し。
メイショウドトウに並びかけ、そこからメイショウドトウも伸びて食い下がってくるものの
追い込んできたファンタスティックライトとともにクビ差で退けてこれでついに重賞7連勝のJRA新記録。
メイショウドトウはまたも2着。4歳勢は下位独占の惨敗となり、世代の評価に大きな影響を与えてしまいました。

直線だけの競馬でこの後世界を席巻するファンタスティックライトを完封したこのレースも間違いなく強いレースでしょう。
ここをベストレースと見る人もいますね。


ジャパンカップに出走することすらできなかったナリタトップロードは翌週のステイヤーズSに出走。

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1.3倍の人気を集めたものの、ここを4着と完敗。
この負けでついに渡辺薫彦騎手は鞍上から降ろされ、ナリタトップロードは的場騎手に乗り替わって有馬記念へ向かうことになります。
ちょうどネットでナリタトップロード人気に火がついていたころでしたかね。

第45回有馬記念

2000年12月24日中山芝2500m 晴 良

年間全勝での重賞8連勝、そして古馬中長距離GI5連勝の大偉業がかかった有馬記念
オペラオーはここも単勝1倍台で1番人気です。次いでメイショウドトウ

2枠4番ナリタトップロード(3人気)
4枠7番テイエムオペラオー(1人気)
7枠13番メイショウドトウ(2人気)

人気は完全にいつもの3頭であり、テイエムオペラオーの偉業達成なるか?
ここが最大唯一の焦点となったレースでしたが、ことは簡単には運びませんでした。

いいスタートを切って、そのままいつも通りに前めにつけたいオペラオーですが、最初のコーナーで接触され和田騎手が立ち上がるほどの不利を受けてしまいます。

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↑和田騎手が立ち上がっている

不利を受けたオペラオーは後退し、馬群の後方まで下げられます。
そこをすぐにオペラオーの外を固めて動けないように騎乗しているアドマイヤボス武豊。(さすがにうまい)
テイエムオペラオーはあっという間に包囲されてしまいました。

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スタート直後のこのレースぶりに、1週めのホームストレッチに入ったところで観客からも怒声があがっていますね。
動画の音声をよく聞いてみるといいかも。「ふざけんな~!」など。

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後方にいるオペラオーをマークしてペースが遅くなったため馬群が一団となり後方から上がる進路がありません。
アウトコース武豊がオペラオーの外に張り付いており持ち出すことができない状態です。

第3コーナーに入って、ナリタトップロードが先団を追いかけていくなど前が動き出してきますが、オペラオーにはまだ進路がありません。さすがにざわつき始める観客。

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最終コーナーを回っても、オペラオーは前に進路をとれず、
実況の堺アナウンサーが残り310メートルしかありません!と叫んだ時にはオペラオーはまだ馬群の中にいました。

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さすがにこれは厳しいんじゃないか…?という雰囲気が漂っていました。


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ゴール前になって馬群を割ってきたオペラオー。生で見ていたらどこから出てきたのか全く分からない。
そのまま突き抜けるように見えましたが、メイショウドトウがもう一度伸びてくる。この馬もただでは負けない。
オペラオーがハナ差前に出たところがゴール。歴史に残る偉業が達成された瞬間でした。

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↑馬群に頭を突っ込んでいる瞬間
後退していくナリタトップロードと前に伸びていくメイショウドトウという形で隙間ができたのでその間を抜けてきていますね。


不利を受けても問題なく競馬ができ、並んで抜かせない。
大差をつけるわけではなく、丈夫で冷静にレースができてただただタフで強い。この地味な強さ。

気性面に難があったりするとそれはそれで個性として人気になったりもしますがオペラオーはそういうことがないですし。
適正や気性に問題がある馬だったら強くてもどこかは落としますからね。
こういう地味な強さも、重ねて勝ち続ければやっぱり惚れ惚れするような強さだと思います。

それに相手が弱い問題も、1強時代を作った馬はほぼそう言われるんですよ。
三冠馬が最初に言われるのはいつも「相手が弱い世代だった」ですよ。
相対的に弱く見えるだけにすぎないんですよ、
三冠馬に負けた馬が別の世代だったら全く通用しなかったかどうかなんてことは分からないんです。
メイショウドトウが上の世代とは勝負にならない程度でしかないなんてことは決まっていない。
メイショウドトウも地味な馬だったからそう見えているだけなんでしょう。

ましてやどこぞの炎上?Pではないですが、遠く離れた世代の比較なんてできないもんです。
強い馬っていうのは勝った馬のことであって、空想の中に思い描いた真の強い馬の姿で決まるもんではないと思います。


どうだったでしょうか?やっぱりオペラオーは大したことなかったんでしょうか?
そんなことはないと思いますが、判断は個人に任せます。
さて、これでオペラオーの話が終わったわけではないので、
オペラオー最後の1年、そしてオペラオーたちが去った後に、1頭だけ残ったあの馬の戦い、
引退した後のオペラオーたちの動向、最後に「現在までの和田竜二渡辺薫彦」と、やる気が残っていればまだまだ続く予定です。