テイエムオペラオーは本当に大したことなかったのか?②

テイエムオペラオーは本当に大したことなかったのか?
今回は3歳(当時表記4歳)クラシックの戦いぶりを振り返って検証してみます。

第59回皐月賞

1999年4月18日中山芝2000m 雨 良

クラシック三冠第1戦、皐月賞です。

1番人気に前走敗れはしたもののその能力を高く評価されているアドマイヤベガ
しかし中間の体調不良もあって馬体重を-12kgと大きく減らしていました。それでも1番人気。
続く2番人気にそのアドマイヤベガを破ったナリタトップロード
テイエムオペラオーはこの時はまだ5番人気でした。

1枠2番 アドマイヤベガ
4枠8番 ナリタトップロード
6枠12番 テイエムオペラオー

レースはナリタトップロードが中団、アドマイヤベガはその後ろ、
テイエムオペラオーはさらにその後ろから競馬を進めるという形になりました。
オペラオーはここまで全て先行策で来ているので、これは思わぬ展開です。

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しかし直線に入ると伸びを欠くアドマイヤベガ
先に動いたオースミブライトを捉えようと懸命に追うナリタトップロードを尻目に
大外から物凄い末脚で追い込んできた馬が1頭。テイエムオペラオーです。
テイエムオペラオーオースミブライトをクビ差で差し切ってまず1冠。
ナリタトップロードは3着、アドマイヤベガは6着。

このレースの見どころは何といってもオペラオーの末脚でしょう。
基本的に前めにつけることの多い馬でしたが、こういう脚を使うこともできる馬なんだと思いますね。
オペラオーの印象に残ったレースにこのレースをあげる人もいる強烈な印象を残したレースだと思います。
「凄い追い込み」みたいなのも人気が出る要素の一つではあるので、オペラオーはここぐらいしかなかったのも地味な理由なんですかね。でもここは凄い脚でしたよ。

第66回東京優駿日本ダービー

1999年6月6日東京芝2400m 晴 良

皐月賞を勝って一躍クラシック戦線の主役に躍り出たテイエムオペラオー
逆転を期すアドマイヤベガナリタトップロードの3頭が差のない人気トップ3となり三強対決の様相を呈していました。

皐月賞で大きく馬体を減らしていたアドマイヤベガでしたが、ここでは+10kgと完全に馬体を戻し万全の状態。
ダービーは和田・渡辺の若手騎手と、トップジョッキー世界の武豊との戦いにもなりました。

1枠2番アドマイヤベガ武豊
6枠11番ナリタトップロード渡辺薫彦
7枠14番テイエムオペラオー和田竜二

今回は皐月賞とは異なり、テイエムオペラオーが中団。
ナリタトップロードはオペラオーをマークするようにそのすぐ後方から競馬を進めました。
アドマイヤベガは後方待機で、追い込みに賭けます。

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前3頭が後続を離していたこともあり、早めに動いていったのがテイエムオペラオー和田竜二でした。
オペラオーは直線入って抜け出し先頭に立ちましたが、結果的には仕掛けが早すぎました。
オペラオーを見ながらレースを進めていたナリタトップロード渡辺薫彦
皐月賞ではオースミブライトを捉えきれませんでしたが、今回は完璧にオペラオーを差し切ってダービー制覇か…
と思われましたがその外にもう1頭、アドマイヤベガ武豊

前年にスペシャルウィークでダービーを勝てないという呪縛から解き放たれダービージョッキーとなった武豊
前を行くライバル2頭を見ながら冷静に仕掛けるタイミングを計り、史上初のダービー連覇となりました。

三強と呼ばれる馬が他馬を離してワンツースリーで決着したダービーで、
これもダービー史に残る名勝負の一つだと思いますね。
しかし、こうなるとどうしても言われ始めるのが騎手の差で、このあたりから言われることが増えてた気がします。

秋~最後の1冠へ

最後の1冠に向けて、オペラオーが秋の始動戦に選んだのは古馬混合G2の京都大賞典
この翌年から菊花賞の施行時期が天皇賞より前になったため今ではここをステップに菊花賞へ向かう馬はいなくなりましたが
それ以前はここをステップにする馬もいました。前年のセイウンスカイもそうです。

このレースにはスペシャルウィークメジロブライトといった歴戦の古馬が出走しており、オペラオーは3番人気でした。
断然の一番人気はもちろんスペシャルウィーク

7枠7番スペシャルウィーク
8枠10番テイエムオペラオー

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…でしたが、スペシャルウィークがまさかの凡走で7着と大敗。
スペシャルウィークをマークしてレースを進めていたオペラオーはスペシャルウィークが全く伸びなかったため仕掛けが遅れ、
馬群を抜け出すのにも手間取ってしまったためツルマルツヨシに届かずの3着敗戦。

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この頭数で、ここしかないというところに包まれているオペラオー…
ここから減速して内に方向転換して、そこも開かなかったのでもう一度外に向きを変えてようやく伸びてくるというレースぶり。
スムーズに進めて力を出し切れていれば…と思わせる惜しいレースでしたね。


さて、一方のアドマイヤベガナリタトップロードの秋初戦は京都新聞杯
こちらも翌年から菊花賞の日程変更に伴ってダービーのステップレースに変更されたため、
菊花賞のステップレースとしての開催はこの年が最後。前年の優勝馬スペシャルウィーク

ダービーの1着2着馬がともに出走しているとあってもちろん人気はこの2頭。
僅差で1番人気に支持されたのはナリタトップロードのほうでした。

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大外に持ち出したアドマイヤベガが自慢の豪脚を発揮してナリタトップロードを差し切っての勝利。
ナリタトップロードはライバルのオペラオーとアドマイヤベガ相手に3連敗を喫してしまいました。

第60回菊花賞

1999年11月7日京都芝3000 晴 良

このレースも人気を分け合うのは3強でした。
前走快勝のアドマイヤベガが1番人気、続いてオペラオーが2番人気。
3つ目のタイトルを絶対に取りたいナリタトップロードは3番人気の評価。
4番人気のラスカルスズカ単勝オッズは大きく離れた21.5倍であり、この3頭が抜けた評価をされているのが分かります。

1枠1番ナリタトップロード
3枠4番テイエムオペラオー
8枠14番アドマイヤベガ

1番枠から発走してスムーズに先団につけたナリタトップロードに対し、
オペラオーとアドマイヤベガは馬群の後ろから2頭並んでレースを進めています。
渡辺騎手はライバルの位置を確認しながらレースをしてる様子がうかがえますね。

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そしてナリタトップロードは得意のロングスパートで先頭に立ち、押し切ってしまいたいところですが、
最後にラスカルスズカ、そしてテイエムオペラオーが猛然と追い込んできます。
勢いは完全にオペラオーでしたが、ゴール板を先に通過したのはナリタトップロード
渡辺騎手、沖調教師ともにG1初勝利となりました。
杉本アナウンサーの渡辺やった~の実況のとおり、悲願のGI制覇という感じでしたね。

アドマイヤベガは距離に問題があったか伸びず6着。
この年の三冠レースは三強がタイトルを1つずつ分け合う結果に終わりました。


クラシック三冠レースが終わったら、あとは古馬との対決になるわけで、
次のレースは有馬記念か、来年の天皇賞を目指して休養するのか、となるところですが、
オペラオーの次のレースはステイヤーズステークスでした。なんで?

騎手のためなのか、馬のためなのか、とにかく勝ちを拾いに来たような他に目立った強豪のいないこのレース。
テイエムオペラオー単勝1.1倍という断然の人気に推されます。

当然勝つだろうと思われたレースでしたが、同世代のペインテドブラックに内をすくわれまさかの敗戦。
いくら2キロの斤量差があると言っても、ペインテドブラックはダービーも菊花賞も7着。
勝ちに来たのに負けてしまったのでいろんな意味で痛い。
結局、続けて有馬記念に出走。ステイヤーズSからという厳しいローテになってしまっています。

第44回有馬記念

1999年12月26日中山芝2500m 晴 良

この年の有馬記念スペシャルウィークグラスワンダーの最後の対決が注目されていたレースです。
人気を分け合うグラスワンダースペシャルウィークに3番人気のメジロブライトが続く古馬勢。
4歳世代からはナリタトップロードも出走しており、5番人気のテイエムオペラオーを上回る4番人気に支持されています。

1枠1番ナリタトップロード
2枠3番スペシャルウィーク
4枠7番グラスワンダー
6枠11番テイエムオペラオー

先行するトップロードとオペラオー、一方のグラスワンダーは後方からで、さらにスペシャルウィークは最後方。
第3コーナーからグラスとスペシャルが動き、一気にまくって先団にとりつきます。

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直線、グラスをとらえ一瞬前に出て見せ場を作ったオペラオーでしたが、
ゴール直前に上がってきたスペシャルウィークとともにグラスワンダーにも差し返されてクビ差の3着に敗れました。
トップロードは見せ場のない7着。


とにかくスペシャルウィークグラスワンダーが注目されたレースでしたが、
オペラオーもタイム差なしの3着まで食い込んで強さを見せているのも重要なポイントでしょう。
京都大賞典で敗れたツルマルツヨシメジロブライトにも先着しています。

このレースに負けたからグラスペより格下みたいに言われるのも不服というか、実際にはスペにもグラスにも1勝1敗なんですよ。
スペシャルウィークの負けは調整失敗のせい、テイエムオペラオーの負けは実力の差、
そういう都合のいい解釈をするから評価がおかしくなっている
んですよ。
テイエムオペラオー菊花賞ステイヤーズS有馬記念とかいうありえないクソローテですし。
菊花賞が現在より後ろなのでレース間隔も狭い)
つくづくステイヤーズSが余計でしたね~。

また、決して好騎乗とは言えないレースが続いてるのも確か。
今でこそ俺たちの和田竜二とか言ってますが、当時はヤネを変えてくれ!ってずっと思ってました。
これはオペラオーの引退まで思ってましたね実際のところ。


この年の最優秀4歳牡馬はテイエムオペラオーが受賞。
グラスペに迫って飛躍を期待させたオペラオーは翌年から快進撃が始まり、
一方のナリタトップロードにとっては苦難の始まりとなる有馬記念でした。

世紀末到来編に続きます